四季の雑記 11・2023

 

■ ワールド、コスモス2つの世界

 

最近、新聞コラムで学んだこと

ワールド、コスモス2つの世界

文芸批評家 新保祐司氏

 

■『渡辺氏は、自分にとって「世界」というのは2つあると言う。ワールドとコスモスである。』という指摘は、非常に興味深い内容ですね。コスモスを深く生きることの大切さが何となくわかります。

2023/03/07

文芸批評家 新保祐司氏 
文芸批評家 新保祐司氏 

 

新保 祐司(しんぽ ゆうじ、1953年5月12日 - )は、日本の文芸評論家。宮城県仙台市出身。1977年東京大学文学部仏文科卒業。元都留文科大学副学長・教授。キリスト教や日本の伝統・文化に理解を示す。自らの評論を「文芸的な評論」とし、詩的な文章をつくることを主眼としている。2007年度の第8回正論新風賞を受賞。2017年度の第33回正論大賞を受賞した。

 

ワールド、コスモス2つの世界 文芸批評家・新保祐司

 

名著『逝きし世の面影』をはじめ多くの著作をのこし、昨年12月25日に92歳で亡くなった日本近代史家の渡辺京二氏は、産経新聞の「話の肖像画」に、平成30年8月14日から18日の間、5回にわたって登場されている。

 

渡辺京二氏が指摘した嫌悪感

その紙面で、2カ所「嫌悪・嫌悪感」という言い方をされていたところが印象に残った。一つ目は、「反国家主義には嫌悪を感じます。現代社会では、国民として国家に帰属し、現実的な利害をともにしなければ生きてゆけないし、治安や医療をはじめ、さまざまな面で国家のお世話にもなっているわけですから。また、国連に協力するために自衛隊を海外に派兵するのは当然だと思います。それを拒否するのは、エゴイズムにほかなりません」と語られているところである。

 

見事なまでに「エゴイズム」を脱却していた渡辺京二という人物の言葉は、「エゴイズム」から遠く離れた精神に立脚した思索なるが故に、清潔で的確なものであった。「反国家主義」は、実は「エゴイズム」から来ていると喝破したのは、それをよく表している。

 

もう一つは、「自分の国の悪口を言いたがるのは日本だけでなく世界中のインテリの特徴です。自国の悪口を言うことができ、『いやそうじゃない』と強弁するのではなく、自分の国の悪いところを素直に認めることができる。それ自体は大事です。ただ、海外や別の場所に進んだモデルを求めてそれと同化し、日本の悪口を言うことによって自分が偉くなったような気になったり、喜々としていたりする態度には嫌悪感を覚えます。自分の国の悪口を言うときには苦痛の念が伴うはずなのですから…」と語られているところである。

 

渡辺氏は、「インテリ」臭のない人物であった。在野の人であり、生活を深く生きて自分の頭で考え抜いた。氏の血の通った文章の力強さは、アカデミズムの空虚さを浮かび上がらせるものであった。氏は、最高の「独学者」だったのである。

 

「インテリ」跋扈する悪弊

江戸時代という「逝きし世」の次の時代、則(すなわ)ち日本の近代には、現在に至るまでこのような「インテリ」が跋扈(ばっこ)する悪弊がある。日本の近代において「海外や別の場所に進んだモデルを求めてそれと同化し」の「海外」は、戦前は西欧、戦後はアメリカであった。一言で言えば、欧米である。この欧米コンプレックスの「インテリ」が、日本という国土に住む「常民」の価値が分からずに「自分が偉くなったような気になったり」していたわけである。

 

欧米は、確かに学ぶべきものを多く持っていた。しかし、欧米の文明のピークは、とうに過ぎて、既に衰退から崩壊の段階に入っている。それをまだ欧米に「進んだモデルを求めて」、欧米ではこうなっているから日本でもそうしなければならないといった言説が今もなされるのは時代錯誤である。シュペングラーの『西洋の没落』が刊行されてからもう1世紀以上もたっているのだ。現実の国際政治において日本は欧米側の一員として行動することが必要だとしても、日本人の保守的立ち位置の精神的独自性を保つことを忘れてはならない。

 

渡辺氏は、自分にとって「世界」というのは2つあると言う。ワールドとコスモスである。ワールドは、政治と経済と文化が展開される空間である。国際政治の舞台であり、インターネットが覆っている世界である。一方、コスモスは、生身の自分を取り巻く世界であり、氏は『無名の人生』の中で「太陽や星や月や、山や森や川に取り巻かれ、風が吹き、雨が降り、住む所を同じくする人びとと交わる世界」としてのコスモスを深く生きることの大切さを語っている。

 

保守の精神深められる

現代人は、ワールドの世界に心奪われて生きざるを得なくなった。コスモスの世界へ精神を傾ける機会が少なくなっている。新型コロナウイルス禍は、その対処をめぐってワールドの世界がコスモスの世界に侵入してくることであった。また、ロシアによるウクライナ侵攻は、ワールドの世界の究極的な現われの一つである戦争を突きつけた。

 

今日、明治時代の歌人、石川啄木の「この四五年、/空を仰ぐといふことが一度もなかりき。/かうもなるものか?」という短歌の感慨がしみじみと感じられる人も多いのではないか。

 

グローバリズムの中で均一化して行くワールドの世界の圧迫の中にあっても、人間はコスモスの世界を豊かに維持しなければならない。渡辺氏の言葉が重さを持ったのは、コスモスの世界に深く根差していたからである。ワールドの世界を冷静に見極め対処することは言うまでもなく重要であるが、それとともに、コスモスの世界に心を致すことも忘れてはならない。そのコスモスの世界から汲(く)み上げるものによって保守の精神は深められるからである。(しんぽ ゆうじ)

 

 

 

■ どんな人生も豊かに受け取れる方  皇后さま84歳

 

最近、新聞コラムで学んだこと

どんな人生も豊かに受け取れる方 皇后さま84歳  作家 曾野綾子氏

 

曾野綾子さんの皇后さま談

人間として非常に大事なことが語られていました。

2023/03/06

作家 曾野綾子氏 
作家 曾野綾子氏 

 

曽野 綾子(その あやこ、1931年(昭和6年)9月17日 - )は、日本の作家。「曾野」表記もある。本名は三浦知壽子。旧姓、町田。夫は三浦朱門。カトリック教徒で、洗礼名はマリア・エリザベト。聖心女子大学文学部英文科卒業。『遠来の客たち』が芥川賞候補に挙げられ、出世作となった。以後、宗教、社会問題などをテーマに幅広く執筆活動を展開。エッセイ『誰のために愛するか』はじめベストセラーは数多い。近年は生き方や老い方をテーマとしたエッセイが多く、人気を集めている。保守的論者としても知られる。大学の後輩である上皇后美智子とは親交が深く、三浦の生前から夫婦ぐるみで親しかった。上皇后(天皇)夫妻が葉山で静養する折、夫妻で三浦半島の曽野の別荘を訪問することも多い。日本財団会長、日本郵政取締役を務めた。日本芸術院会員。文化功労者。

 

どんな人生も豊かに受け取れる方 皇后さま84歳  作家 曾野綾子氏

 

皇后さまは大変賢い方。賢いとは、どんな人生も豊かに受け取れるということ。それは日本国民にとってとても幸せなことだ。

 

夫の三浦朱門の生前から、天皇、皇后両陛下が葉山御用邸で静養中、車で30分ほどのところにあるわが家に来られることがある。大根畑の真ん中にあるので、大根を使った家庭料理をお出しする。庶民の生活をご存じでいらっしゃるのも必要なことだから。

 

御料車が農道を曲がれず、立ち止まってしまったりすると、近くの農家の方がごあいさつをする。すると、両陛下は車の中から作柄について聞かれたりする。生活を知ろうとされているのだ。そういうお人柄が皆を幸福にしている。

 

皇居の清掃を志願してやって来る人たちへのあいさつも大事にされている。感謝を伝えるだけでなく、何気ない会話もされる。それだけ、日本全体のことをよくご存じなのだ。

 

皇后さまとしての役割は何より、天皇陛下といいご夫婦でいらっしゃること。教え合ったり、記憶を確かめ合ったり、豊かな会話をされている。皇后さまの言葉遣いには尊敬の念があるが、堅苦しくはない。外から見ていても気持ちがいい。

 

皇后さまのお誕生日には、まず御所で小さな音楽会をなさる。チェロやフルートなどの演奏家が呼ばれ、プログラムには「伴奏、美智子」と書いてある。ご自分の誕生日なのに、必ず伴奏。主にはならない。その立場を通されている。

 

上皇后になられたら、少し暇を作って、好きな音楽をなさってほしい。お出歩きの範囲を拡げていただきたい。

 

一度だけ、皇后さまがお忍びで書店に寄られるのをお手伝いした。後で「文房具売り場にも行きたかった」とおっしゃった。

 

1年に何度か、皇后さまが気楽に書店にいらっしゃれるようにして差し上げたいとは時々思う。(談)

 

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